宮崎学園短期大学

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劣等感サバイバル戦略  ~劣等感にはまらず、見栄張りに終わらない自分の進歩を~

2019.07.26

退職後の晴耕雨読

 65歳、同級生は定年退職する年齢である。退職後の理想に「晴耕雨読」が語られる。これまで十分勤しめなかった自然や書物と対話したいということだろう。

 人間の性で、何かに邪魔されてできない時は「できたらよいのに」という願望が頭をもたげる。試験勉強の最中など「あれもしたい」「これもしたい」が浮かんで集中できなかった。しかし試験が終わってすぐにそれに飛びついたかというと、そうした記憶もない。退職した人に「本が読めるようになった?」と聞くと、「全然読めない」という返事が返ってきたりする。時間の合間を縫ってやりたいことに精を出すのが、充実した人生を送る秘訣かもしれない。

劣等感の見栄張り系vs.目立ちたくない系サバイバル

 ところで、若い頃は誰もが劣等感の塊である。人に馬鹿にされないように見栄を張ることに腐心する。流行ファッションで尖ったり、社会の動きの最先端を担っているつもりになったり、反対に周りの人が近づきにくいカウンターカルチャー(ヤンキー、つっぱり、暴走族など)や、特殊な趣味(オタク)の世界に居場所を求めて存在をアピールする。SNSでひたすら人を上から目線で攻撃する炎上は、日頃認められない自分の存在アピールがあるように思う。

 これらの「目立ちたい系の劣等感サバイバル戦略」のもう一方に、自分に自信が持てず、ひたすら「目立ちたくない系の劣等感サバイバル戦略」を追求する人たちもいる。周りに気を遣い、仲間はずれにならないように自分を抑えることに汲々とする。しかし「一寸の虫にも五分の魂」、ひたすら自分を抑えようとすると、押さえられたエネルギーはどこかで爆発の機会を窺う。それが新たな転生の機会になればいいが、事件になることも少なくない。

 さて「目立ちたい」系の「見栄張り戦略」、いわゆる「背伸び」路線であるが、うまくいけば見栄張りに伴って中身も蓄積されていく。与えられる役割に応じて人は成長する。

砂上の楼閣耐震工事

 私も今まで見栄張りでやりくりして来たとしみじみ思う。人生の終盤を控えても、未だに見栄を気にしている。

 他人の眼を気にして築かれる人生は砂上の楼閣であろう。ひとたびに何かに揺さぶられたら基礎から崩れそうである。 

 勤務の忙しい最中に入院することになってしまった。学者の端くれだが、若い頃から当面の必要範囲で本をつまみ食いしてきた。言ってみれば「本を読んでいる」振りを作ってきた。そこで入院を機会に人生の耐震基礎工事、読書に挑んだ。2年前に肺炎で入院したときは、これまで手に取ることもなかった長編小説に挑戦した。『大地』『ワイルドスワン』『百年の孤独』『カラマーゾフの兄弟』、60歳を過ぎて「食わず嫌い」に気づき、若い頃からの苦手意識が克服されつつある。

 今回の入院生活では哲学書に挑戦した。プラトン、カント、ニーチェなど。読んでみて、これまでの自分の考えが揺さぶられる中身に出会えた。もっと早くに読んでいれば、自分はそこからどれだけ成長できただろうと思う。

早咲き目立つが、劣等感にはまってはいけない

 劣等感を持つことなく才能を早咲きさせ、さらに高みを目指して進む人は世の中にどれくらいいるのだろう。優等生から落ちこぼれまでが人間ピラミッドを作っているとすると、人と比べて自分に自信を持っていられるのは最上端のほんの一握りの人間である(いない)。最上端以外の99%の人間は、みな自分に劣等感を抱き、見栄張りに腐心し、自分自身の非耐震性に不安を持っている。

 生涯にわたる人生の成長において学習は不可欠である。ましてや社会の変化も学問の進展も急速で、過去の延長とは違う未来が登場する。ますます生涯学習が必要なこの時代に、早咲きしなかった才能に劣等感の「だめ烙印」を押し、伸びる芽を枯らしてしまっている人が多い。それは今、学んでいる最中の若い人までも及ぶ。

見栄張りに終わらない自分の進歩を

 老若男女、読書、語学、文化、音楽、スポーツ、芸術、「遅咲き」に何を遠慮することがあろう。「早咲きしなければ手遅れ」という根拠のない劣等感の呪縛を断ち切り、見栄張りに終わらない自分の進歩に目を開かせたい。

 「遅すぎるスタートはない」「取り返しのつかない失敗はない」

 発見ほど楽しいことはない。友よ、発見を語ろう!

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